難易度:上級者向け
ブラシマスク機能とキーフレーム機能を応用したアニメーション演出になります
・キーフレーム機能(位置+拡大/縮小)
・ブラシマスク機能
・トランジション機能
・(装飾)エフェクト機能
・(装飾)ブレンド機能
製品版:PowerDirectorに対応
※フリーズ・フレームの切り抜きにブラシマスクを使用しますのでWin版のみ対応
今回は、人物紹介などにぴったりなマスク機能を使った『フリーズアニメーション演出』を
PowerDirectorで作成する方法を紹介いたします。

少し難しいので下記機能についてはあらかじめ目を通していただけますとありがたいです。
キーフレームとイージング関連記事
この演出は
(1)『紹介したい人物』を『演出したい瞬間』で静止画にする
(2)その背景だけが置き換わっていく
という演出アニメーションになりますので
演出アニメーション中は静止画、つまり動画自体は止まっている状態だということです。
動画自体を止めるために、アニメーション中は静止画に置き換えているのですが
これはPowerDirectorの機能で『フリーズ・フレーム(スナップショット)』を出力する機能を使っています。
そして置き換えたフリーズ・フレーム(=静止画)の背景をブラシマスクで削除するだけで完成させられるアニメーションなので、
わざわざ色抜きしやすい背景などで動画を撮り直す必要がないのが最大のメリットです
ブラシマスク機能のないMac版はご注意
恐らく現Mac版にはブラシマスク機能がないと思いますので、PowerDirector上で切り抜きができない、という点にご注意ください。
どうしてもやりたい場合は、プレビュー画面を右クリックしてスナップショットを出力し、別の画像ソフトでスナップショットの背景を削除する必要がございます。
つまりどんな動画素材でもOKということです。
それでは実際に作成の手順を説明していきます。
メイン作業:『基本の人物部分を切り抜く作業』
まずは、メイン作業である人物を切り抜いて背景が置き換わっていくまでの工程を解説します。
その工程が終わった後はご自由に『サブ作業』を参考に装飾していただければと思います。
以下の作業はメインのプロジェクトファイルで作成せずに、新規プロジェクトファイルで練習or作成してください。
なぜなら、作業工程の中でトラックごと素材の表示時間がズレる部分があるからです。
手順1.紹介したい人物or物が写った動画素材を用意してPowerDirectorに配置する
まずは、紹介したい人物や物が写った動画クリップをPowerDirectorのタイムライン上に配置します。
手順2.切り抜くシーンを決めて『フリーズ・フレーム』を出力する
タイムラインに配置した動画クリップをプレビューで再生しながら
ここで演出に入りたいというシーン(タイミング)を決めます。
シーンが決まったらその位置に<タイムラインの再生バー>を合わせて動画クリップを右クリックします。
続いて<動画の編集>から<フリーズ・フレーム>を押します。
するとその地点を境目として5秒間の表示時間のフリーズ・フレームが出力されます。
フリーズ・フレーム出力時にその地点を境目としてすべてのトラックをバッサリ分割してしまう点にご注意ください。
フリーズ・フレームだけを出力したい場合は、フリーズ・フレームを出力後、『Ctrl+Z』で1段階元に戻すのがおすすめです。
手順3.『フリーズ・フレーム』の演出時間を調整する
次に、出力した『フリーズ・フレーム』の表示時間:演出時間を調整します。
簡単に言うと演出アニメーションを何秒見せたいかということです。
ただし、トランジションに掛ける時間もありますので
ここでの全体の表示時間というのは
前半トランジション時間 + 表示時間 + 後半トランジション時間
という感じで計算して算出します。
個人的にバランスがいいなと思う時間は
前半+後半のトランジション時間をそれぞれ1秒の半分である0.5秒に設定することです。
(プロジェクト設定で1秒間が60fpsで編集しているなら30フレームで0.5秒になりますが、30fpsで編集しているなら15フレームで0.5秒になります)
そうすると、前半トランジションが0.5秒+後半トランジションも0,5秒となり
2つ合わせて1秒のトランジション時間となります。

あとは真ん中でメインの表示時間をざっくりと決めればOKです。
個人的に3秒くらいがおすすめですが
メインの表示時間はあとで簡単に微調整できるのでここは割と適当で大丈夫です。
メインの表示時間が3秒で各トランジションが0.5秒ずつなら
0.5秒(前半トランジション) + 3秒(表示時間) + 0.5秒(後半トランジション) =4秒(全体時間)
という感じになりますので
ここではフリーズ・フレームの長さを4秒に調節しておきます。
※フリーズ・フレームを選択し、4秒で分割後、不要な部分をDELETEします。
手順4.『フリーズ・フレーム』を3つに分割し、中央のフリーズ・フレームと背景素材を入れ換える
先程算出したとおりに
4秒のフリーズ・フレームを「0.5秒」「 3秒」「0.5秒」の3分割にします。
※過程は問いませんので下記画像のように分割してください
そして3つに分割ができたら
一番表示時間の長い『3秒のフリーズ・フレーム』と『背景素材』を置き換えるようにトラックを入れ替えます。
※ここでいう背景素材というのは元画像の背景が消えていくときに後ろから浮かび上がってくる新しい背景素材です。
上の画像のように『3秒のフリーズ・フレーム』を前面トラックに移動させて
空いたところに背景に使用する画像素材(※下記おすすめ素材など)を入れてあげてください
手順5.背景素材と前半+後半のフリーズ・フレームを『トランジション』で結合する
手順④で背景素材を入れ替えたので3分割した素材は以下の並びになっています。
0.5秒(前半トランジション) + 2~3秒(背景素材) + 0.5秒(後半トランジション)
そしてこの置き換えた『背景素材』と
前後2つの『0.5秒のフリーズ・フレーム』をトランジションさせていきます。
まず、トランジションルーム→スペシャルにある<グリッド>を
「背景素材」と「前後の0.5秒のフリーズ・フレーム」の境目にそれぞれドロップして適用します。
そして適用した<グリッド>のトランジションをダブルクリックして
「トランジションの設定」画面を開きます。
所要時間を0.5秒(60fpsなら30フレーム)にして
トランジション動作を『オーバーラップ』に変更します。
トランジションをオーバーラップ適用するとそのトラック上の後ろにある素材だけが時間軸上でズレますのでご注意ください。
するとトランジション部分が前後それぞれ0.5秒(合計1.0)秒になり
それ以外のメインの表示時間が3秒になります。

手順6.前面に置き換えたフリーズ・フレームを背景素材と重なるように調整(ブラシマスク)
続いて、手順⑤で作成した『トランジション結合した3つのクリップ』と
前面トラックに配置した『3秒のフリーズ・フレーム』の表示時間をタイムライン上でピッタリと合わせます。
そして「3秒のフリーズ・フレーム」を選択し
<デザイナー>→<マスクデザイナー>をクリックします。
そして『マスクを反転』にチェックを入れて『ブラシマスクを作成』をクリックします。
すると『ブラシマスクデザイナー』が起動しますので
背景部分(or被写体)をブラシでなぞっていきます。
『マスクを反転』にチェックを入れた場合は、ブラシでなぞった部分が削除されるようになります。
ブラシマスクで背景が切り抜けたらマスクデザイナー上で<OK>を押します。
そうすると動きはありませんが
この時点で背景だけが置き換わるアニメーションになっていると思います。
手順7.ブラシマスク化した『フリーズ・フレーム』にキーフレームアニメーションを作成
ここから背景を切り抜いた『メイン用のフリーズ・フレーム(2秒~3秒)』そのものに
『キーフレーム』を適用させてアニメーションを作成します。
今回使用するキーフレームアニメーションは
「移動アニメーション」と「拡大/縮小アニメーション」の2つですが
まずは比較的かんたんに調整できる『拡大縮小アニメーション』から設定します。
その後で『拡大縮小アニメーション』のキーフレームに合わせて『移動アニメーション』を設定するのが楽です。
まずは、拡大縮小アニメーションのキーフレームから設定します。
『3秒のフリーズ・フレーム』を選択し『キーフレーム』を押します。
そして『前半トランジションが終わる位置』と『後半トランジションが始まる位置』にそれぞれ
拡大縮小のキーフレームを打ちます。
※キーフレームの位置はトラック(1)のトランジションの位置を参照してますが、実際にキーフレームを打つのはトラック(2)のフリーズ・フレーム
この2点は絶対にハズレのない位置ですので
慣れるまでは必ずこの2点からキーフレーム設定を始めるのが良きです。
次に『前半トランジションが終わる位置のキーフレーム』より前方に1点キーフレームを打ちます。
※これは後でドラッグで簡単に微調整できるので、とにかく前であればOKです
そして『後半トランジションが始まる位置のキーフレーム』より後方に1点キーフレームを打ちます。
※こちらも後でドラッグで簡単に微調整できるので、とにかく後ろであればOKです
これで合計4点のキーフレームが作成されました。
あとはそれぞれのキーフレームにおける拡大縮小のパラメータを設定するだけでOKです。

拡大縮小キーフレーム
左から順番に『A,B,C,D』として各キーフレームのパラメータが以下
A:高さ/幅 (1.0)
B:高さ/幅 (1.3) イーズイン(0.4)
C:高さ/幅 (1.3)
D:高さ/幅 (1.0) イーズイン(0.4)
あとは同じ拡大縮小キーフレームと同じ位置に
4点の『位置キーフレーム』を打ち座標をそれぞれ設定するだけでOKです

位置キーフレーム
左から順番に『A,B,C,D』として各キーフレームのパラメータが以下
A:X (0.500) Y (0.500)
B:X (0.550) Y (0.500) イーズイン(0.4)
C:X (0.600) Y (0.500)
D:X (0.500) Y (0.500) イーズイン(0.4)
これでメインの作業は完了になります。
サブ:演出アニメーションの装飾ポイント
編集中
装飾ポイント1.背景素材にブレンドモードで映像を合成
メインの作業で背景素材に画像を使用しましたが
少し背景を動かしたい場合は、『パーティクル系の素材動画』を合成するのがおすすめです
おすすめパーティクル系映像素材
■帰属表記必要なし:ダウンロードはこちら
合成の仕方はとても簡単で
まず『3秒のフリーズ・フレーム』を1つ前面のトラックに移動します。
そして移動して空いたトラックに合成用の映像素材を配置します。
※映像素材の表示時間は4秒で合わせますができるだけ動きのある部分をトリミングして使用します
次に配置した映像素材を右クリックし、クリップの属性→ブレンドモードの設定を変更します。
素材によって相性がありますが『スクリーン、乗算、オーバーレイ』あたりがオススメです。
合成用の映像のINとOUTにもトランジションを設定
このへんはお好みでいいのですが、より自然に映像をなじませたい場合は
合成用の映像素材のINとOUTにフェードなどのトランジションを設定するのがオススメです
装飾ポイント2.演出に合わせてアニメーションテキスト素材を配置する
最後に、今まで作成した演出に合わせて
アニメーションするテキストを合わせて装飾してみます。
まず、このようにスライドするだけのシンプルなテキストアニメーション作成します。
作成方法は『タイトルルーム』でタイトルクリップを作成し
『タイトルデザイナー』でキーフレーム機能を使えばOKです。
メモ
アニメーションするタイトルクリップが作成できたら
『3秒のフリーズ・フレーム』をさらに前面のトラックに移動させます。
そして空いたトラックに『先程作成したアニメーションするタイトルクリップ』を配置します。
すると背景と被写体の間にアニメーションするテキストが入るという
なんともオシャレな仕上がりになったと思います。
あとは同じ要領で最前面のトラックに逆の動きをするアニメーションテキストなどを入れてあげますと
こんな感じに仕上がっていくという寸法です。
総括:ブラシマスク機能を使ったフリーズ・アニメーションの作成方法
というわけでいかがでしたでしょうか
少し敷居の高い演出かもしれませんが、
しっかり作れるとかなりオシャレな仕上がりになる演出だと思います。
使用用途としては、結婚式のプロフィールムービーや余興ムービーなどですが
普通にYoutube動画の演出の1つとして使用することも勿論可能です。
気合のある方はぜひともチャレンジしていただければと思います。